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船首形状進化論 帆船「日本丸」ペーパーモデルアート 番外編

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はじめに

今回の記事は 帆船「日本丸」製作の関連記事であると同時に

空母「飛龍」を作ってみた シリーズとも関連します

過去の記事で、船舶の船首形状について触れたことがありますが

その時は主に4種類の形状について紹介しました

 

その後いろいろと調べてみると、コトはそう簡単ではないことに気づきます

数多くのサイトを巡回して船首形状の名称を整理してみようと試みたのですが

いろんな方が、いろんな視点から解説しており

同じ形状なのに別の名称だったり

個々の艦では改装によって形状が変わったり

国・地域や時代によって呼称が違っていたり

 

まだ自分の中で混乱が収まっておりませんww

 

なので自分が納得できる範囲の部分を最大公約数的つまみ食い的にまとめてみました

検証が不十分な箇所もありますので、誤りがありましたら穏便にご指摘をお願いします 

クリッパー・バウ その他

 

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クリッパー・バウ

クリッパー・バウ

まずは分かりやすいように喫水部位が直線か曲線で分けてみました

 

ですが

ぶっちゃけ上の列は全部クリッパー・バウ

でひとくくりにしちゃってもいいような気がします

クリッパー・バウの中でも

より垂直に近いタイプ(直立船首、垂直船首など)

より角度が切り込んでいるタイプ(傾斜船首、アトランティック・バウなど)

こう考えると整理しやすいです

 

こんな代名詞になるくらいクリッパー型の帆船は、当時世界的に有名だった、ということでしょうね

船の基本中の基本 みたいな

 

有名なクリッパー(特にティー・クリッパー)の中でも最も有名なのは

英国商船 カティ・サーク

ですが、この船の数奇な歴史についてもまた稿を改めて語っておりますので

↓コチラを参考に

wakajibi2.hatenablog.com

 

カティ・サークの船首の喫水部分は直線で、若干傾斜が付いていますね

これぞ THE! クリッパー・バウ 元祖クリッパー・バウ

 

帆船「日本丸」もティー・クリッパーの流れをくんでいると推察されますので

クリッパー・バウと称して差し支えないかと・・・

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アトランティック・バウ

アトランティック・バウ

この私見バリバリの分類ではアトランティック・バウ(大西洋艦首)はクリッパー・バウの亜型ということになります

上甲板から船底にかけて豪快に傾斜をつけていますね

これは巡洋戦艦「シャルンホスト」「グナイゼナウ」を始め、主に第二次大戦時のドイツ軍艦を解説するときにしばしば見られる呼称です

f:id:wakajibi2:20180705130341p:plainwikiより

名称の由来は大西洋が主な活動海域だったからかなー?(推測)

 

本音を言っていい??

(´-`).。oO(これ結局クリッパー・バウじゃん?? (ヒソヒソ声で))

 

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スプーン(カッター)・バウ

スプーン・バウ カッター・バウ

次にスプーン(カッター)・バウですが

船首の最上部から船底にかけて、一定の曲線を描きながら形作っていることが分かります

滑らかな曲面で構成されている「スプーン」の先っちょ

あるいは手漕ぎボートの「カッター」の形状

ここから付けられた名称です

 

一見、洗練されていて、スマートに波を切ってくれそうな印象ですし、上甲板の面積を小さくして重量を軽減できます

実際速度重視の場合は有利にはたらくようです

 

当初この形状を採用していた長門型戦艦峯風型・神風型駆逐艦では、波の高い海面でとんでもないことが起こります

 

波に突っ込んだ艦首が、文字通りスプーンのように大量の海水を掬い上げて甲板上に跳ね上げます

軍艦は相当早い速度で進んでいるため前方からの風も凄まじく、海水の塊は霧状になって後方に吹き付けます

酷い時は艦橋まで吹き上がってきたというからもう大変

何が大変かって、甲板上に設置されている大砲の照準ができなくなるほどの霧になったそうです

 

シアーとフレアについて

この現象についての解決策でもありますが・・・

カッター・バウ から ダブルカーブド・バウ への説明に移る前に

少々厄介な、シアー と フレア について解説しないといけません

 

シアーとは:

船首の乾舷と上甲板を先端に行くにしたがって徐々に上に傾斜させていく形状

大波によって船全体が前方に傾斜しても、船首が波に突っ込みにくくする→スプーンバウのように海水を掬い上げないようにする目的

船首形状 シアー

上の図の赤線の範囲

 

フレアとは:

乾舷(舷側)を上に行くにしたがって外側に反らせていく形状

船首で波を切って、跳ね上がってくる水を押さえつける、または外側へ払い除ける目的

船首形状 フレア

上の図の赤線の部分

 

いずれの形状も、大海原での耐波性、凌波性を高めるうえで非常に重要な役割を果たしています

 

旧帝国海軍の艦艇には実用性の面からこのシアー・フレアを付けているものが多いのですが、これらが艦形を勇壮あるいは優美に印象付けている理由だとも言われています。

(´-`).。oO(すっげぇ職人技が必要なんだろうなぁ・・・とも思う)

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ダブルカーブド・バウ

f:id:wakajibi2:20180701174322p:plain

ダブルカーブド・バウは

「2種類の異なる曲率を持つ曲線で構成される艦首形状」

という趣旨で解説されることが多いのですが

この文章通り、高校数学、高校物理 レベルの頭で解釈すると・・・

曲率の小さい(ゆるい)カーブと

曲率の大きい(きつい)カーブで構成

 f:id:wakajibi2:20180705102206p:plain

あースミマセン、これ「スプーン・バウ」なんスけど・・

 

で、あえて文章で表現するなら

正の曲率 と 負の曲率じゃね?

と思ってググってみたら

ユークリッド幾何学」「双極性空間」「宇宙におけるうんたらかんたら・・」

とか

f:id:wakajibi2:20180701175320p:plain

不可解な数式などが出てきたので

f:id:wakajibi2:20180701174941p:plain

こんなんなって、俺はそっとウィンドウを閉じた

そして、カーズは考えるのをやめた・・・

 

ま、まぁ・・・とにかくS字カーブなんですよS字 (汗

 

旧帝国海軍ではスプーン・バウを採用していた峯風型と神風型駆逐艦

この後継型と言われる睦月型駆逐艦からこのダブルカーブド・バウが採用されました

この形状が凌波性の向上など、有用であることが分かり、その後の特型駆逐艦以降にも採用されています

 

また、元々は同じ形状で建造が進められていたはずの姉妹艦「川内型」の軽巡洋艦でも

川内→スプーンバウ

神通・那珂→ダブルカーブド・バウ

のように時代が進むにつれて変更されていったようです

 

第二次大戦期の艦艇の進化に伴って生まれてきた船首形状と言ってもいいでしょう

つまりダブルカーブドバウのほとんどはスプーン・バウからの改装(または設計変更)でシアーとフレアを増設した艦首を指して呼称されることが多いようです

 

ところが!!これで終わりではありません

旧帝国海軍の駆逐艦

スプーンバウ・バウ → ダブルカーブド・バウ 

と進化を遂げてきたのですが

実は最終局面 つまり最新型で最速を誇った駆逐艦

島風」さん(艦これでは「ぜかまし」の愛称)の船首は

クリッパー・バウ

f:id:wakajibi2:20180705131034p:plainwikiより

に戻って(進化して?)いますww

結局はクリッパーかぁ・・・

 

ただ、この画像やプラモデルなどを見る限り、島風の船首の喫水部位は直線型ではなく、後方にえぐれている(凹曲面)形状で

すっごい洗練されて、スピーディーな形状に見えるのですが、上に挙げたカティ・サークのような元祖クリッパー・バウとは異なる印象を受けます

(´-`).。oO(これをクリッパー・バウと呼んで良いものか・・・むしろ固有のシマカゼ・バウじゃね?)

 

このように軍艦の中にはクリッパー・バウの形状にシアーとフレアが付いているものも多く

船首の上方は前方に大きくせり出して、独特のカーブを描きます

こうなってくると

ダブルカーブド・バウ と クリッパー・バウ+シアー・フレア

この2つの名称は、明確に区別することが出来るのか否か??

結局のところ、角度が垂直に近いのか、傾斜がついているのか、湾曲がきついのか緩いのか、凸曲面なのか凹曲面なのか、直線なのか・・・

この辺の微妙な差異だけのような気がしてきました

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バルバス・バウ

お待たせしました!!

新うみのこ バルバス・バウ

普段は記事の中で 絶叫 か 連呼 しかしていなかった

バルバス・バウ(球状船首)

今回は解説を加えてみましょう

 

上記数種の船首形状とは異なり、船首の傾斜、湾曲などはほぼ度外視で、全く新しい理論・概念から生まれた船首形状です

 

(まずは以前の記事をそのまま引用します)

 

当時最先端だった戦艦大和は球状船首を採用しており、この技術は現在においても幅広く活用されています。

 

(そして今回はさらに図説も加えてみます)

バルバス・バウ 造波抵抗の打消し

原理: 水面で船首が波をつくるよりも前方にあらかじめ波を生じる。結果、水面で船首が水を掻き分けて生じる波は、バルバス・バウによって生じた波とは逆位相となり、それぞれの山と谷が打ち消しあうことで波を小さくする。結果として造波抵抗を最小化して燃費の低減や速度の向上を図ることができ、さまざまな船に有効である。

造波抵抗: 船の航走時に波を作るためにエネルギーが失われるために生じる抵抗であり、船の速度の2乗に比例して増す(wikiより)

 

どやぁぁぁ!!

前回よりも分かりやすい!!(自己満足ww)

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船首形状進化論

今までの解説をムリヤリ図にまとめてみました

f:id:wakajibi2:20180705163052p:plain

結局のところ

伝統的・古典的な船首形状と

世界大戦などで軍事的な必要性によって新たに研究・開発された船首形状

これらがゴッチャになって後世に伝わっているため

ひとまとめに整理すること自体がナンセンスなのかも知れません

 

そーなんです

ここまで必死に書いてきて、今までの内容全否定ですww

鼻で笑いながら読み流して頂ければ幸いです

 

パトラッシュ、疲れたろう。僕も疲れたんだ・・・

 

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