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歴史群像 2021年8月号 | |本 | 通販 | Amazon
戦艦大和を作っています
ちょいと甲板のお話
大和型の大きな特徴の一つとして、前甲板、特に第一砲塔の部分が緩やかに沈み込んでいます
戦艦 大和と武蔵 - 心と神経の哲学/あるいは/脳と精神の哲学より一部改変
最前部から詳しく見ていきましょう
船首は耐波性を上げるため、可能な限り高く(シアー)上面は広く(フレア)しなければいけません
シアーとフレアについてはこちら
で図説
しかし耐波性が必要だからと言って、甲板をその高さのまま後ろにもってくると、どうしても主砲の設置場所が高くなってしまいます
んでこれまた主砲が重い!!46cm三連装主砲塔1基で約2500tと言われています
幸運艦「雪風」で知られる陽炎型駆逐艦まるまる1隻と大体同じくらいの重さですね
こんな重石を高い位置に設置なんかしようものなら復元力が維持できず、何かの拍子に船がひっくり返ってしまいます
波の対策のために高くするのは船首のみで、それ以降は緩やかに、かつ計算上許される限界まで下げた位置で第一主砲塔を設置します
その後方から被さるように第二主砲塔が構えます(いわゆる背負い式)
この2基をなるべく低い位置で抑えられるようにこのような甲板の形状をしているのです
なお、この甲板を下げたことによりその前後に傾斜が出来てしまいました
この坂ことを乗員たちは「大和坂」と呼んでいたとか
後世の我々が「戦艦大和」に接する機会というのは主に模型や写真ですよね
そういった視点で見ると、この甲板は湾曲であったり凹みであったり単なる傾斜でしかありません
ところが実際に乗船していた乗組員の目からは、通称とはいえ「坂」という単語で表現される地形として認識されていたんですね
如何に大和が巨大な建造物であったかを物語るエピソードです
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さて、ペパクラ作業のことがあまり触れられていませんが
「組み立て手順」の冊子に記載されているので詳細は省きます
前回、船体内に組み込んだ井桁型の補強パーツがここでも生きてくるお話です
ペパクラでの悩ましい作業の一つに
「閉鎖空間の最後の面を閉じる時ののりしろ処理」
というのがあります
空いている面があればそこから指や器具を突っ込んで、裏側からのりしろを押さえられるのですが
最後の面だけはその操作ができないのです
一つの解決策として「菓子箱フタ形状」というのを提唱しておきますが・・・
この状態
最後の面を閉めた段階で各のりしろが交互に噛み合わさっており、比較的貼り合わせやすいのです
ですがこれは一旦置いておいて
もう一つの解決策
船体補強パーツを利用した作用反作用
模型を横から見た断面図です
前甲板のりしろの根元がちょうど骨組みの横板と一致しており、中甲板を貼り合わせる際、作業台からの作用反作用によって自動的に裏側からのりしろを押さえつけることができます
これだと水平面に接地したまま作業ができて、船体の歪み・反りなどが未然に防げるのです
あとは、ご覧のように、補強パーツの縦板には「大和坂」を再現する傾斜が付けられています
このあたりも「よー考えられとるなぁ」と久嶋師匠の仕事ぶりに感動しながら作業を進めています
次回は艦橋や煙突を積み込んでいくための下地作りです
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