はじめに
以前から断続的に帆船やヨットについていくつか記事を書いてきました
帆船のマストとセイルには固有の名称があるんです 帆船「日本丸」ペーパーモデルアート その7
【帆船の歴史】バウスプリットセイルと驚愕のバウスプリットトップセイル
(´-‘).。oO(改めて並べてみると、やっぱり系統的な整理が出来ていないなぁ・・・)
これらの延長線上にある話題ですよー
あ、別に上の記事読まなくても大丈夫だけど読んでくれるとなお嬉しす
突然ですが皆様、キールってご存じですか?
このキールという単語を説明するためだけに、帆船の歴史と、各時代における代表的な船について語らなければなりません
今回はその前フリ、ということでご理解頂ければ、と思います
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キール=竜骨
元々の意味は
キール(英:keel)=竜骨です
造船時、一番初めに船の中心線を前後方向(進行方向)に配置する構造材で
この竜骨に直角になるように肋材となる部品を組み上げて行きます
ね?見るからに「竜の骨」っしょ
バイキング船の造船風景をモデルに3D構築してみましたが、まさに
竜骨をイメージするのに最適ではありませんか、ねぇ
(´-`).。oO(まぁ脊椎動物でいうところの背骨と肋骨の関係やね)
漫画「ワンピース」にも詳しく説明してくれるクダリがありました
ONE PIECE 35(ジャンプコミックス) 尾田栄一郎より
太古の昔から造船における最も大事な部位であることは論を待ちません
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キール=船底
初めはキール=竜骨だったのですが
実はこの単語、時代によって意味合いが変わってきます
これがこのシリーズ記事の主題
まずは簡単に歴史から紐解いていきましょう
先ほど紹介したバイキング船が北ヨーロッパを蹂躙していた頃から、やや時代は進み
地中海、大西洋を中心とした大航海時代へ
船はどんどん大型化していきますが、基本的に造船方法に大きな変化はありません
この頃も造船時の竜骨の設置は一般的で、ほぼすべての船舶において船底に鎮座します
このような共通認識の結果いつしか・・・
キール=船底 という意味も持ち始めます
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キール=錘(おもり)
帆船の黎明期には大型船のセイルは横帆が主流でした
時代が進むにしたがってステイセイルの発明、横帆→縦帆へトレンドが移行していくと船のヒール(傾斜)や横流れが問題になってきます
キール(船底)は細長く、また喫水を深くすることによってその問題を解決するとともに
キール(船底)に錘(おもり)を積載することによって復元力を増加させます
(´-‘).。oO(おもり=バラストともいう)
最初は重い積荷や水を満載した樽などでその役目を果たしていましたが、重石など恒久的にキール(船底)に積んでおく場合もありました
おきあがりこぼし
の要領ですな
やがて
キール=錘 という意味も持ち始めます
しばらくの間帆船はこの原理を元に拡大改良が続いて行ったのです
船底形状の変化はこちらで解説
(´-‘).。oO(今回の記事もこの続編みたいなもんやね・・・)
この後さらに
船体の大型化、先鋭化、マストの強度UP、セイル形状や艤装の発展など、恐竜的な進化を遂げて行った帆船ですが、船底の形状そのものはあまり大きく変化しませんでした
キール、という言葉も
【キール】 船の中心を貫く基準材→船底など周辺部位→そこに積み込む錘
これらを漠然と指すようになり
初期の意味合いから大きく逸脱することはありませんでした
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ティークリッパー【カティサーク】
時代は流れ
軍事的には戦列艦
商船としては、有名なカティサークを筆頭とするティークリッパー型の帆船により華やかかりし最盛期を迎えます
カティサーク(Cutty Sark)とは
19世紀後半に建造され、すべてのマストに横帆を装備しているfull rigged ship装帆のイギリスの商用帆船です
アジアからイギリスまで茶葉を運ぶティークリッパー船としても知られています
ロンドン近郊のグリニッジの港に保存展示されており、現存する唯一のティークリッパー船とも言われています
まぁ一言でいうと帆船の代名詞みたいな有名な船です
船名の「カティサーク(Cutty Sark)」は物語に出てくる魔女から採っています
スコットランド語で短い(cutty)肌着(sark)を着ていたとのことで、魔女本人の固有名詞では無いんです
現代ファンタジーでいうところのサキュバス的な感じですかね、この魔女サマ(適当)
物語の主人公がその妖艶な魔女に手を出そうとしてバレて、魔女やその他の悪魔たちに追いかけられ、捕まりそうになる「お約束」展開
馬に乗って逃げる主人公に魔女が迫る!!
馬の尻尾を掴んだ魔女、しかしその尻尾は抜けてしまい主人公は命からがら逃げ帰ったとさ
このため船首には左手に馬の尾を持った、中二病を刺激する美麗な魔女の船首像が装備されています
当時からいわゆる「初物」には相当な付加価値があり、その年に初めて採れた茶葉は高値で取引されるため、誰よりも早くアジアから本国へ茶葉を持ち帰ることがステータスになっていました
莫大な富と栄誉と名声を創出してくれるこれらの帆船の乗組みは当時の花形と言っていいでしょう
ライバルのティークリッパー船サーモピレー(Thermopylae)との熾烈な競争など、歴史に残る名勝負の数々でも有名です
どちらが最速だったのか?という議論は未だに尽きないのですが、やはり「現存」している強みもあって、知名度ではカティサークが上でしょうね
なので今回の記事もカティサークを採り上げてみました
いずれにせよ帆船が華々しく活躍していた時代であったことは間違いありません
ところが、カティサークが生まれた時代に前後して蒸気機関の実用化が進みます
ただ初期の蒸気船は燃料効率も悪く遠洋航海に不向きでした
また蒸気船は石炭を大量に積み込むことにより茶葉の品質が落ちる、と考えられておりしばらくはティークリッパー船の独壇場でした
しかしながら帆船は既に進化しきっており、徐々に蒸気船の性能向上が帆船を上回ってきます
ここでさらに海運の歴史を変える出来事が起こります
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運命の1869 帆船時代の終焉
1869年 スエズ運河の開通
え?帆船もそこ通ればいいじゃん、って思うでしょ?
実はスエズ運河の周辺は風がほとんど無く、人工なので川幅も狭い
恒常的な動力を持つ蒸気船でなければ通過することが出来ないのです
画像を見て頂くと分かりますが、すべての船が帆を張らずに一列に汽走していますね
排煙も緩くたなびいているだけで、そよ風程度の気候のようです
ヨーロッパ⇔アジア航路において
・アフリカ大陸南端ケープタウン、または南米大陸南端ケープホーンを周らなければならない帆船
・片やスエズ運河を通過し、一気に地中海⇔紅海⇔インド洋へ移動できる蒸気船
時間も安全性も確実性も比較にならないですよね、帆船に残されたアドヴァンテージは燃費の良さのみ
また北米大陸に限って言えば、同じく1869年に大陸横断鉄道が開通しています
これもケープホーンを周る必要が無くなったため、海運の需要は激減しました
生まれながらにして帆船の終焉を見届けるべく宿命づけられていたのです
帆船の歴史を語るほとんどすべての資料はこの時代を最後に、口を揃えて「帆船の終焉」という内容で締めくくっています
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ところが
「北○の拳」風の表現を借りると
186x年、世界は蒸気船の台頭により一変した、スエズ運河は開通しすべての非動力船が死滅したかのように見えた、しかし帆船は死滅していなかった。
♪テテテテテテテテー
(この後あのミュージックが再生された人は同世代認定)
蒸気船が主力となった後も、燃費の良さというメリットは残っていますので補給困難な長距離航路や漁業用
さらには遊興用、競技用として長く愛用されることになります
そしてカティサークVSサーモピレーのように船のスピードを競い合った伝統は続き
1851年 第1回ロンドン万国博覧会においてヴィクトリア女王陛下主催の
あのレース
の原型が開催されることになります
あ、そうそうキールの話でしたね
帆船の終焉と呼ばれた時代以降
文字通り重荷から解放された帆船はとんでもない進化を遂げていくことになります
もちろんそれは我々が生きている現在においても続いています
実は進化し続けているんです
これらを説明するのに最も象徴的なのがキールなのです
カティサークはこのキール形状変化の起点として独断と偏見で設定した次第であります
次回は
あのレース
と
そこで活躍した船
について語りつつキール形状と意味合いの変化についてみていきましょう
キール(英:keel)
それは船の中心を貫く基準材
それは船底など周辺部位
それは船底に積み込む錘
・・・そして新たな時代へ
PowerPoint®の「変形」機能を使った動画も出来つつあります
さぁ!テンション上がってきたよ~
次の記事はコチラ
上の記事はいわゆる本編で、生き残った帆船がさらに進化していく話
一方、軍用艦として使用されていた帆船は本当に消滅してしまいます
こっちの軍用艦ルートは↑この記事で完結です